時をかける少女 3 題 + 12006年09月30日 07時28分

時をかける少女』筒井康隆

読んでみての第一感想が「古い」。小学生の頃読んだ少年探偵団シリーズを思い出しました。まあ 40 年前の作品ですからね。「精神病院」=「キチガイ病院」となっているのも時代を感じさせます。しかし文体が災いしてか内容には今ひとつのめりこめませんでした。最後和子が未来に希望を抱きながら、それでいて待ちの姿勢なのが個人的に好きでないというのもあります。

『時をかける少女』大林宣彦

時系列としては筒井康隆を読み、細田守を見て最後に見たのが大林版です。原田知世の弓道姿や夜道のシーンも艶があってよかったのですが圧巻は何といってもラストシーン。ベタな予想を裏切る振る舞いに心をわしづかみにされました。ただ、他 2 作と比べてタイムリープによる悪影響があまり描かれていないのが少し気になります。タイムリープを利己的に使うわけではないので描いたところで蛇足かもしれませんが。あと、カレンダーのことでごねる妹さんがほほえましかったです。あの妹さんが真琴の母親に……はならないんでしょうね。各作品の「芳山和子」はそれぞれ別人でしょうから。

『時をかける少女』細田守

2 回見に行き、タイミングの違いもありますが 1 回目は 8 割の入りといった感じだったのが 2 回目はチケットを買った時点で残り 4 席、立ち見も出る勢いでもうちょっと遅れていたら私も危ういところでした。内容はといえば前評判どおりの傑作。真琴の躍動感がそのまま伝わってきます。タイムリープを自分のために使うのがいかにも現代的ですね。千昭との馴れ初めが 3 作の中で一番自然なのもすっきりしていていいかも。ただ一点心配なのは桃を自転車のかごに入れて運んだら痛まないかということですが。

タイム・リープ あしたはきのう』高畑京一郎

細田版時かけを見た直後、お勧めのライトノベルとして取り上げられていたのを思い出して購入したら大当たり、これはすごい。過去と未来の複雑な絡みを矛盾なくつなぐ構成や伏線をきっちり使い切るところなど読後の爽快感は一番です。若松君の完璧ぶりにやや古臭さを感じなくもないですが、すべてが一本にまとまる中でそんなことは所詮些事。一気に読ませる勢いを持つ作品です。「あとがきがわりに」ははてなでしたが。

ブギーポップ再読2006年09月30日 07時26分

はてなブックマークを覗いていたら注目のビデオにブギーポップ関連のものが挙がっていました。ちょうどちょっと前にブギーポップシリーズを再読したのですが、以前読んだときは『VSイマジネーター』『ハートレス・レッド』『ペパーミントの魔術師』の順で好きだったのが、今回は『パンドラ』に圧倒されました。特にラストシーン、谷川流の言う「王道」(の変則) だと思いますが、私の心に来る展開です。シリーズ最高作としてその名を挙げる人が (少なくとも私の周りでは) 多いのもうなずけます。

ついでに『ビートのディシプリン』も読みました。内容はよかったのですがラスト、ではなく「序章」が……。連載時には付いてなかったそうですが、この風呂敷きちんとたたんでくれるんですよね?

さらにアニメ『Boogiepop Phantom』も見ました。最初は原作を読んでいても全然意味がわからないと思っていたのですが第 4 話『MY FAIR LADY~けがれなき少女への愛~』で完全に惹きつけられました。『N・H・Kにようこそ!』と同じ「イタさ」を感じる話です。こちらのほうが自己投影はしにくいのですが、N・H・K と違ってギャグがない分一気に魅せられてしまいます。後は早乙女君の「今や、あなたは僕らの敵だ」が聞けたのがよかったところ。

しかし最初に読んだときから気になってはいたのですが「うう……」の多用や、面白くないという意味での「つまりません」(『夜明けのブギーポップ』p. 171) という表現はいかがなものでしょうか。今回「嫌われたくない、としか思わないことはできないのだ。」(『VSイマジネーター Part 1』p. 241) という一文が出てきたときには思わず我が目を疑ってしまいました。三重否定そのものは涼宮ハルヒシリーズにも出てきますが (溜息か退屈にあったはずですが今は見つけ出せませんでした)、あれは古泉という説明好きな人物の台詞だからまだ許せるもの。地の文で使われるのは正直読みづらいと思うのですが。

緑川ゆきさんサイン会2006年08月14日 12時39分

私の敬愛してやまない漫画家の一人、緑川ゆきさんの『夏目友人帳第 2 巻発売記念サイン会に行ってきました。緑川さんの作品は登場人物から流れ出す繊細で時に熱く時にカラフルな空気が大好きで、特に「蛍火の杜へ」ではまさしく体中に電撃が走るという思いを体感したのですが、そんな緑川さんの初サイン会に参加できたことは僥倖としか言いようがありません。

当日は開始時間の 10 分ほど前に会場についたのですがすでに長蛇の列。1 時間以上並んでようやくご本人と対面することができました。作風どおりの繊細できれいな方だなと感じたのですが緊張でろくに話せなかったのは残念。後ろに並んでいた人が握手してもらっていたのを見て自分も頼めばよかったと少し後悔しました。

それでも実際に緑川さんとお会いできサインをいただけたのは何物にも変えがたい大満足。緑川さんとこのサイン会を企画・実行してくださった関係者の皆様にはただただ感謝するばかりです。帰り道にふと『夏目友人帳』第 2 巻のカバーを『蛍火の杜へ』の単行本につけておけばサイン入りの『蛍火の杜へ』が手に入ったのかなと思ったのですが、そんないけないこと考えちゃいけませんね。

SOS 団に欠けているもの2006年07月07日 05時46分

涼宮ハルヒの憂鬱」シリーズは小説もアニメも面白いと思うのだが、どうも SOS 団に入りたいという気持ちはわかない。なぜだろうと考えていたら SOS 団には先輩・後輩がいないという点に思い当たった。もちろん朝比奈さんはハルヒたちよりも先に卒業していくわけだが、そこで何らかの引き継ぎがあるわけでもないだろうし、ハルヒが進級にあたって SOS 団に後輩を引き込んでくるというのも考えづらい。

マンガ・小説等に出てくる文科系クラブの中で私が一番好きなのはわかつきめぐみの「月は東に日は西に」(「わかつきめぐみの」と断らなければいけないこの哀しさ) に登場する楽描倶楽部だが、そこでは先輩から後輩へとクラブが引き継がれていく様が丁寧に描かれ、卒業した先輩もクラブのことを愛しているのが伝わってくる。クラブを愛する気持ちではハルヒたちも負けてはいないだろうが、彼らが卒業した後、北高に彼らの戻れる場所はないわけで、その点に少し寂しさを感じてしまう。

あるいは作品に出会った時期が関係しているのかもしれない。「月は東に日は西に」を読んだのはまさに私が高校 3 年生のときで、作中の出来事を自分の高校生活とリアルタイムに重ねてみたものだが、涼宮ハルヒシリーズを読み出したのはアニメ化が決まってからのごく最近のことで、もはや高校生活は遠いものになってしまっている。

……と書いておいて園原電波新聞部なら入りたいという事実に気づいてしまった。上に書いたことと完全に矛盾している。なぜだろう。ハルヒよりも水前寺のほうについていきたいんだよな。考えるのが面倒になったので結論なし。

2006 正月の読書履歴2006年01月09日 11時38分

「このブログについて」で「マンガ・アニメとか」といいつつそれ系の話をまったくといっていいほどしてこなかったわけですが、さすがにそれもなんなので正月に読んだものでも。

まずはつだみきよ。「ファミリー・コンプレックス」→「革命の日」→「プリンセス・プリンセス」と来て最後でストライク、読んだ順序が幸いしました。思い起こすは懐かしの「ここはグリーン・ウッド」。登場人物のかわいいことかわいいこと。ちょっとした小ネタに作者ののりを感じさせます。それにしてもグリーンウッドでは最後にファンサービスで、それでもモザイクかけてやったことを大ゴマ使って堂々とやるとは (しかも 1 分……) 、時代は変わったもんです (レーベルの違いのほうが大きいか)。

ライトノベルでは「半分の月がのぼる空」(橋本紡) の 4 巻まで。一人称が心地よいです。舞台が実家に比較的近いこともあって親近感もアップ。日常っぽい非日常さに心揺さぶられます (高校生で 1 ヶ月以上入院って十分非日常だと思うんだよね)。しかし何かライトノベルでは「イリヤの空、UFOの夏」に次ぐ鬱作品になりそうな気配が……。(それにしても里香みたいなのをツンデレって言うのね。2 巻を読み出してようやく気づきました。)

しかし「プリンセス・プリンセス」「半分の月がのぼる空」両作品ともアニメ化とのことで。最近はホントアニメ化されるものが多くなってきましたね。こっちとらそんな鑑賞に費やせる時間はないというのに (大嘘)。