TypeScriptでイベントをPromise化する関数の型を定義したい2022年12月03日 10時41分

この記事はTypeScript Advent Calendar 2022の3日目の分です。


addEventListenerでリッスンしているイベントをPromise化する」という記事で、イベントをPromiseで受け取る関数が紹介されています。Node.jsのeventsモジュールのevents.onceメソッドと同じ機能を実現するものですね。Webブラウザ組み込みのDOMでも同じ機能を提供しようという提案もなされています。

最初の記事では余談として今回紹介したeventPromisifyはTypeScriptで書こうとすると型の定義が難しいなと思いましたと書かれています。例えばeventPromisify(document, 'click')と呼び出したら返り値の型がPromise<MouseEvent>になってほしいのですが、そのような型定義を記述できるでしょうか? (以下、TypeScript 4.9を想定しています。)

イベントが発生する対象(target)とイベント名(type)を決め打ちできるのなら、

type EventForDocumentClick =
  typeof document.addEventListener<'click'> extends
    (type: 'click', listener: (event: infer E) => void) => void
  ? E : never;
// = MouseEvent

のように、document'click'からMouseEventを導出できます。しかし、変数documentではなくDocument型だけが与えられているとき、Document['addEventListener']<'click'>のように型引数を指定することはできません。

またDocument型におけるaddEventListenerメソッドの定義は、イベント名がDocument固有(keyof DocumentEventMap型)のものとイベント名が文字列全般(string型)のものがオーバーロードされています。型引数が絡んでいなければ、「オーバーロードされた関数型から引数の型や返り値の型を取り出す方法」に書かれているように型を取り出せます。しかし、型引数を持つメソッドがオーバーロードされているときに、意図した型引数が指定された場合の引数や返り値の型を取り出せるのかどうか、私にはわかりませんでした。

結局私にできたのは以下の状態までです(TypeScript Playgroundで確認)。

type EventTypeFor<Target extends EventTarget> = Target['addEventListener'] extends {
  (type: infer T, listener: (e: Event) => void): void;
  (type: string, listener: EventListenerOrEventListenerObject): void;
} ? T : never;

type EventFor<Target extends EventTarget> = Target['addEventListener'] extends {
  (type: string, listener: (e: infer E) => void): void;
  (type: string, listener: EventListenerOrEventListenerObject): void;
} ? E : never;

const eventPromisify = <T extends EventTarget>(
  target: T,
  type: EventTypeFor<T>
): Promise<EventFor<T>> => {
  throw new Error('Not implemented');
}

const p = eventPromisify(document, 'click');
// p: Promise<Event | MouseEvent | UIEvent | ClipboardEvent | AnimationEvent | InputEvent | FocusEvent | ... 11 more ... | WheelEvent>

第2引数をDocument固有のイベント名に限定することはできています。しかしながら、返り値のPromiseの値の型をMouseEventに限定することはできず、Document固有のイベントすべての共用体型となってしまいます。

Perlで配列の先頭何要素かを抜き出す2022年12月02日 02時16分

この記事はPerl Advent Calendar 2022の2日目の分です。


Perlで配列の先頭n要素を抜き出したいとき、最近はList::Utilモジュールhead関数を使えます。

use List::Util qw(head);
my @array1 = qw(a b c d e);
my @array2 = head 3, @array1;
# @array2の内容は('a', 'b', 'c')

List::Utilモジュールはコアモジュール(Perl本体と一緒にインストールされるモジュール)であり、Perl 5.28以降なら追加のモジュールインストールなしにhead関数を使えます。それより古いPerlでは、List::Utilの新しいバージョン(1.50以降)をインストールする必要があります。

以前からある方法

配列スライスを使うこともできますが、抜き出す要素数から1引いた値を指定することになって、ちょっと紛らわしいです。

my @array1 = qw(a b c d e);
my @array2 = @array1[0 .. 2];
# @array2の内容は('a', 'b', 'c')

また、元の配列の要素数が抜き出す要素数より少ないときは、不足分がundefで埋められてしまいます。

my @array1 = qw(a);
my @array2 = @array1[0 .. 2];
# @array2の内容は('a', undef, undef)

undefで埋められたくなければ、min関数を使うなどひと工夫する必要があります。

use List::Util qw(min);
my @array1 = qw(a);
my @array2 = @array1[0 .. min(2, $#array1)];
# @array2の内容は('a')

splice関数を使うこともできますが、元の配列も変更されてしまいます。

my @array1 = qw(a b c d e);
my @array2 = splice @array1, 0, 3;
# @array1の内容は('d', 'e')
# @array2の内容は('a', 'b', 'c')

CSSでモーダルダイアログの背景をスクロールさせないようにできるかもしれない2022年12月01日 01時41分

この記事はCSS Advent Calendar 2022の1日目の分です。


HTMLのdialog要素を使うとモーダルダイアログを表現できます(使い方によってはモードレスダイアログも表現できます)。ただし、そのままだとモーダルダイアログを開いているときに、マウスホイールなどによってダイアログの背景(文書全体)までスクロールしてしまいます。

モーダルダイアログの背景をスクロールさせたくない場合、これを書いている現在のCSS仕様草案によれば、以下の記述で実現できるはずです(デモ)。

dialog {
  overscroll-behavior: contain;
}

しかしながら、この方法はChrome canary 110では期待通り動作しますがマウスホイールによるスクロールは防げますが、矢印キーやPageUp/PageDownキーによるスクロールは防げず、Firefox nightly 109では動作しません。

このあたりの事情はちょっと複雑で、

となっています。上述のCSSコードが将来的にも機能するかどうかは不透明です。

HTMLのa要素にはhref属性を指定しなくてもよい2022年10月20日 23時30分

HTMLのa要素はハイパーリンクを表す要素であり、リンク先のURLをhref属性に指定します。しかし、a要素の役割はそれだけではありません。HTML標準によれば、a要素は「リンクとなりうる箇所のプレースホルダー」として使うこともできます。この場合はhref属性を指定しません。

リンクとなりうる箇所の例として、ナビゲーションやタブUI、パンくずリストなどでの「現在の項目」があります。

<nav>
  <ul>
    <li><a href="/">ホーム</a></li>
    <li><a>最新記事</a></li>
    <li><a href="/archives">アーカイブ</a></li>
    <li><a href="/settings">設定</a></li>
  </ul>
</nav>

ReactなどJSXでa要素を生成する場合、href属性を指定しないためにはhrefプロパティにundefinedを指定します。

import React from "react";

type Item = {
  label: string;
  url: string;
  isCurrent: boolean;
};

type Props = {
  items: readonly Item[];
};

const Navigation: React.FC<Props> = ({ items }) => (
  <nav>
    <ul>
      {items.map((item) => (
        <li>
          <a href={item.isCurrent ? undefined : item.url}>
            {item.label}
          </a>
        </li>
      ))}
    </ul>
  </nav>
);

リンクのプレースホルダーとしてのa要素は、うまく使えばテンプレートやCSSの記述を簡潔にできます。覚えておいて損はないでしょう。

なお、a要素にhref属性を指定しないと聞いてname属性を指定するのかと思った人もいるでしょうが、現在のHTML標準ではa要素のname属性は廃止済みであり指定すべきでないとされています。

私とIEとフィードバック(IE卒業式)2022年06月19日 12時28分

2022年6月16日に開催された「IE卒業式」というイベントで、「私とIEとフィードバック」という発表(5分間のライトニングトーク)をしてきました。以下に話した内容を掲載します。


私とIEとフィードバック

2022-06-16

nanto_vi (株式会社はてな)

Web開発者によるフィードバック

  • 標準準拠
  • 相互運用性の向上

➜ より開発しやすく

ブラウザベンダが不具合に気づくことを期待するという受身の立場から、積極的に熱心でいる(自らバグを報告する)ことへの移行は、信じられないほど多くの力をあなたにもたらします。

John Resig

[発話] ソフトウェアを作るうえでも使う上でもフィードバックは重要ですね。Webブラウザの場合、Web開発者からのフィードバックによって標準準拠の度合いが進んだり、ブラウザ間の相互運用性が向上したりして、Web開発者にとってはより開発しやすくなります。John Resigさん——jQueryを作った方です——も、バグが直るのを待つのではなく自らバグを報告するとめっちゃええことあるというようなことをおっしゃっています。

個人開発者によるIEへのフィードバック手段

go to http://131.107.85.110/msdn/bugreports/ to report issues

Internet Explorer 5.5 Preview

[発話] 個人がIEにフィードバックする手段は、IE 7の前後で大きく変わっています。IE 7以前はニュースグループ——掲示板やメーリングリストのようなものです——が中心でした。IE 7以降はMicrosoft Connectというサービスを使うようになっています。Microsoft Connectにはバグトラッキングシステムが備わっており、他人の登録したバグを検索したり、自分の登録したバグの状態を知れたりと、バグ報告者からすると使いやすくなっています。ちなみに、IE 5.5 Previewのときにはバグ報告用のURLがIPアドレス丸出しで、のどかな時代だったんだなというのを感じさせます。

IE 8 Betaへのフィードバック

開発者の支持のないブラウザは廃れるとの思いで、標準準拠路線を進めてきた

「ここが変わった! IE8 Beta2」(第13回 Admintech.jp勉強会)

  • 筆者もフィードバックに参加
    • Web Storageがオリジンごとではなくドメインごと
    • Web Storageのイベントが同期的
    • 文書間メッセージング(postMessage)のイベントが同期的

[発話] 私がIEにフィードバックするようになったのはIE 8 Betaが出たあたりからです。このころはFirefoxとSafariがIEを追い上げ、GoogleがChromeを発表し、Microsoftとしては非常に危機感を持っていたのではないかと思います。実際に、当時あったイベントでMicrosoftの方が、開発者の支持のないブラウザは廃れるとの思いで標準準拠路線を進めてきたというようなことをおっしゃっていました。このころはWeb Storage APIや文書間メッセージングが新機能としてもてはやされ、私も標準仕様とIEの実装との差異をいくつか報告しています。Web Storage API——localStorageなど——の範囲がオリジンではなくドメインである、すなわちhttpsのページで書き込んだデータをhttpのページで読み込めるというったことがありました。

フィードバックの返礼品

  • IE 8の工具セット
  • FirefoxとThunderbirdの傘

[発話] そうしたバグ報告をしているとMicrosoftからメールが来て、グッズを送るから住所を登録してくれと言われました。何かしらと思って住所を入力すると後日IE 8の工具セットが届きました。これでIEを直せということでしょうかね。こうしたノベルティの贈呈はMicrosoft以外のブラウザベンダもやっており、MozillaからはFirefoxとThunderbirdの傘をもらったことがあります。

フィードバックしよう!

[発話] 皆さんもどんどんフィードバックしていきましょう。個別のブラウザにフィードバックする以外にも、ブラウザ間の相互運用性を高めるためにweb-platform-testsというものがあります。web-platform-testsにコミットすると各ブラウザで実行され、場合によってはブラウザ側で挙動が変更されることもあります。フィードバックを通じてWebの将来を作っていきましょう。ありがとうございました。


以上が発表内容です。久々の発表、しかもリモートからの参加ということで緊張しましたが、無事終えられてよかったです。

イベント自体は懐かしい機能を思い出したりIEの功績を振り返ったりと、IEの存在感の大きさを改めて感じられるものでした。イベントを企画・運営してくださった方々に感謝します。(IEのケーキが思ったより大きくて、現地で食べてみたかったです。)

IE 6も登場した時点ではそこまで悪いものではなく(個人的にはまだCSS 2ではなくCSS 1なのかと思いましたが……)、開発者の落胆を招いた要因としては、その後5年もメジャーバージョンアップがなかったという部分も大きいかと思います。

発表するにあたって、発表内容で触れた以外にも以下のページを参考にしました。また、窓の杜およびInternet Archiveには当時の記事が多数残っており、調査の大きな助けとなりました。